細菌性膣症は膣内の正常な常在菌のバランス、ノーマルフローラの乱れが原因でおこります。日本性感染症学会ガイドラインでは、性感染症ではなく性感染症関連疾患として扱われています。
通常、膣内が正常な状態を保っているのは乳酸菌のおかげです。それが、膣ガルドネラ菌などの悪い菌に変わったことによって起こる病態が細菌性膣症です。
魚が腐った時のような異臭のあるおりもの(魚臭帯下)が最も特徴的な症状です。
しかし、一般的にあまり知られていないため、性病でもないのにパートナーから性感染症ではないかと疑れ、体臭ではないかと思い込まれることもあります。
男性にとっては臭いが気になっても言い出せないことが多く、「男が黙って去っていく病気」と表現した欧米の研究者もいます。
妊婦の細菌性膣症は絨毛膜羊膜炎、低出生児体重児、早産、赤ちゃんの肺炎、髄膜炎、菌血症などの原因となるので治療が大事です。
予防策としては、膣の自浄作用に任せ、『性交以外は膣内を静かにほっておく』ことが最も重要です。それは、静かにしている間に膣ガルドネラ菌が自然に減少し、乳酸菌が増え膣内環境がととのえられるからです。この神秘的ともいえる自然の力に任せ、自ら正常フローラを乱してしまうことはやめましょう。
膣洗浄をしたいと思うときは、おりものが増えたりや嫌な臭いなど、いつもとはちがう、気になる症状があるからだとおもいます。その時は膣洗浄やおりものシートを増やす前に先ずは婦人科を受診するか、おりものや臭いの原因を調べてみましょう。
入浴中膣内にお湯が入ってしまう方で細菌性膣症になってしまった場合、治療後しばらく入浴はひかえてシャワーを利用してみることも試してみる価値があるかも知れません。
抗生物質の使用後の注意、規則正しい生活習慣に気をつけ、乳酸菌保護・予防の観点から乳酸菌サプリの力を借りるのも良いかもしれませんね。
細菌性膣症は膣内のノーマルフローラのバランスが崩れた状態なので、検査は膣内の細菌のバランスやおりものの状態で判断します。
一般的な検査方法として
があります。ただ、婦人科外来でのチェックは大変でなかなかここまで厳密に検査をすることは難しいようです。
また、おりもの検査の一環として『細菌培養検査』をされますが、細菌性膣症を診断する目的で培養検査はしません。それは、例え膣ガルドネラ菌が検出されてもそれだけで細菌性膣症とは診断されないからです。
膣内を支配している菌の状況を顕微鏡で観察する方法が最も簡単で確かな方法です。アイラボでは膣ぬぐい液を使ってどのような菌がどう膣内環境に影響を及ぼしているのかで診断します。
WHOの診断基準
おりものの性状(外観):均一で、粘り気がなく、灰白色
おりものの酸度:㏗5以上
Clue cell クルーセル:出現の有無
化学的アミン臭の確認(アミンテスト):10%水酸化カリウム液とおりものを混ぜた時アミン臭がある。
以上4項目中3項目が陽性(当てはまる)の場合に細菌性膣症と診断されます。
国際的にも広く採用されているNugent score
膣内から採取した検体にグラム染色という特殊な染色を施した標本を顕微鏡1000倍で観察し、乳酸菌と細菌性膣症に関係する菌(膣ガルドネラ菌・モビルンカス)の相対的割合を算出しそれをスコア化し、0-10段階で評価するものです。
乳酸菌(1視野中の菌数/スコア):0/4、1以下/3、1-4/2、5-30/1、30以上/0
膣ガルドネラ(1視野中の菌数/スコア):0/0、1以下/1、1-4/2、5-30/3、30以上/4
モビルンカス(1視野中の菌数/スコア):0/0、1以下/1、1-4/1、5-30/2、30以上/2
判定は 正常(スコア合計が0-3)、中間(4-6)、細菌性膣症(7-10)
アイラボ方式
膣ガルドネラ菌が繁殖して群がっている細胞をClue cell(クルーセル)と言います。
私達が用いている細菌性膣症の診断基準は、より日常の臨床に直結したもので、以下のように3段階に分けています。産婦人科からの検査でもこの基準で報告しています。
BV-1:Clue cellは認めないが、標本背景の大部分が膣ガルドネラ菌(Gardnerella vaginalis) である。
この段階はWHO分類にはありませんが、膣内が膣ガルドネラ菌にシフトした状態で、嫌な臭いになりますので、私達はBVの初期段階と考えています。
BV-2:Clue cellを認めるが、標本背景に好中球の増加(炎症像)を認めない。
WHO分類の中に含まれる所見です
BV-3:Clue cellを認め、標本背景に好中球の増加(炎症像)を認める。
WHO分類にもNugent scoreにもない項目ですが、炎症を伴っている場合は治療方針が異なるので、炎症があるかないかの区別を重要視しています。
※BV:Bacterial vaginosis (細菌性膣症の意味です)
1. メトロニダゾール膣錠(フラジール膣錠):1錠250mgの膣錠を6日間
2.クロラムフェニコール膣錠(クロマイ膣錠、クロロマイセチン膣錠):1錠100mgの膣錠を6日間
3.内服療法:メトロニダゾール1回500mgを1日2回7日間内服
などの治療方法ががあります。
(参照:日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン2016)